コラム

2020.08.19
キャリア 人事コンサル 人事トレンド 働き方
更新日:2020.08.19
著者:H.C.
キャリア 人事コンサル 人事トレンド 働き方
Withコロナ、Afterコロナにおける人事トレンド
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Withコロナ、Afterコロナにおける人事トレンド

新型コロナウィルス感染拡大防止策としてテレワークを導入する企業が急増している。
経団連が4月にまとめた在宅勤務の実態調査(緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策各社の対応に関するフォローアップ調査)によれば、テレワーク・在宅勤務を実施している会員企業は97.8%と、ほとんどの企業で取り組みが始まっている。
そしてこのテレワークの普及は、一過性のものではなく、多くの企業で今後も定着すると予測されていて、むしろその普及と定着のために経団連は5月14日、「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を公表し、このなかで緊急事態宣言が解除されても在宅勤務などのテレワークを推進することを盛り込んでいるほどだ。つまり、新常態(ニューノーマル)社会では、ITを活用した場所や時間にとらわれない働き方が求められているのだ。

そこで今回はWithコロナ、Afterコロナ時代における新たな働き方に関連した人事トレンドを紹介したい。


01
新たなワークスタイルへの対応

人事はWithコロナ、Afterコロナを見据えてどのような施策を行うべきか?
以下に3つのポイントをあげる。



1.勤怠管理ツール・就業規則の見直し

まず、テレワーク主体での勤務形態では、それに合致した労務管理方法が必要となってくる。

勤怠管理の方法として、すでにクラウド型の勤怠管理ツールなどを使用していれば、始業・終業時刻を正確に打刻するよう改めて周知するなど小幅な対応ですむはずだ。
しかし、まだ導入できていない企業も多く、この場合は勤怠管理ツールの導入を検討する必要がある。もちろん、勤怠管理ツールを使用しなくても、メールやビジネスチャットツール、電話などで始業・終業時に報告を行うという方法もある。手間がかかるが、労働時間を適正に把握することは企業の責務であるため、ここはきちんと押さえておきたい。

また、自宅に休校中の学童がいる、要介護者がいる等の理由で、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げや中抜けの時間が生じることがある。こうした要望が従業員から出た場合に備えて、就業規則の見直しについても検討しておきたい。



2.通勤手当からテレワーク(在宅勤務)手当へ

テレワークに移行することによって通勤手当の支給が不要となり、その代わりとして、在宅での仕事環境を整備するために、在宅勤務手当を支給する企業も多い。

例えば株式会社日立製作所では在宅勤務で増える光熱費や、出社時に着用するマスクの費用などとして、1人あたり月3千円を補助する制度を新設し、6月から支給を始めている。
在宅勤務手当の使途については、基本的に労働者側の裁量に委ねられるが、主な使途として、通信費、パソコン本体や周辺機器類、机や椅子などの備品類などが考えられる。また、パソコンやその周辺機器、備品類は会社から実費や現物を支給されることもあるが、この場合はその所有権は従業員ではなく、会社側に留保することも可能だ。

企業が在宅勤務環境を整備することについては、国や自治体などから一定の補助金を受けることができる助成金制度も拡充されているので、対象となるかどうか積極的に検討するとよいだろう。



3.キャリア支援、副業許可

終身雇用・年功序列が崩れた近年では、仕事に求める価値観や会社と個人の在り方に変化が生まれ、「社員自身がキャリア形成を考え、企業はそれを支援する」という考え方に変わりつつある。また、テレワークを機に自身のキャリアを見つめる時間が増加した結果、自分に最適なキャリア形成を模索して転職活動を開始する高付加価値人材も多い。

この結果、企業では人材の流出を防ぎ、より貢献できる人材へと育てるため、個人のキャリアアップを支援する策を充実させるようになってきた。キャリアアップカウンセリングやキャリア開発研修、資格取得支援などが代表的な支援策だが、ユニークな取組をしている企業もある。
例えば株式会社丸井グループには「お客さまのお役に立つために進化し続ける」「人の成長=企業の成長」という経営理念のもと、公募制で全社員が積極的に参加できるグループ横断的な会議やプロジェクトを設置している。これは丸井の「手挙げ方式」とも呼ばれ、この中に「成長支援プログラム」「人の成長会議」などキャリアアップを支援する施策が盛り込まれている。

また、KDDIなどのように若手社員を中心とした副業への希望に応じる形で、新たな仕事に挑戦したい社員を対象にした「社内副業」制度を導入する流れも出てきている。
こうしたキャリア支援、副業許可のカタチは、各企業がアイディアを競いながら今後ますます充実していくことになるだろう。


02
人事評価制度の見直しとジョブ型雇用への移行

緊急事態宣言下、在宅勤務が主流となったとき、管理職は部下の仕事の進捗管理や人事評価の難しさを痛感することになった。
テレワーク環境下では、仕事の成果物と納期を決め、それに応じて評価するのが最適なのだが、いきなり成果主義を導入するのも現場の混乱を招きかねない。まずは自社の評価制度が在宅勤務であっても通用するものかどうかから検討を始めることが妥当で、評価制度そのものを変えるのではなく、テレワークに見合った形に運用を見直すだけでもニューノーマル時代の新しい人事評価制度を策定できる可能性もある。

こうした中、ジョブ型雇用を導入する動きがにわかに活発になってきている。ジョブ型雇用とは仕事内容を詳細に記述したジョブディスクリプション(職務記述書)に基づいて働く雇用制度で、欧米企業などが広く採用している。

例えば株式会社日立製作所は、働きぶりが見えにくい在宅でも生産性が落ちないよう職務を明確にする「ジョブ型」雇用を本格的に導入し、勤務時間ではなく成果で評価する「人財マネジメント」への転換を加速させると発表している。
テレワークを導入することで、従業員の頑張りや努力、途中のプロセスなどがブラックボックス化しやすい中、「ジョブ型」雇用へ移行することは、業務の「見える化」を可能にし、必要な業務と不要な業務があぶり出され、目標にコミットし約束した成果に対しての達成度合いをシビアに判断できるため、今後も導入の動きは広がっていくだろう。

ただし、これもいきなり「ジョブ型」雇用へ完全移行するのではなく、自社の制度が在宅勤務であっても通用するものかどうかをまず検討し、必要な場合はジョブディスクリプションを明文化することから始めるとよいだろう。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00849/00027/


03
自律・分散・協働型の組織運営を促進するために人事に求められること

Withコロナ、Afterコロナ時代には働く環境の急激な変化により、新しい価値観を持った社員や、先に述べたような理由で離職を考える社員が出てくる。
このため、人事は新しい働き方と組織運営を検討し、エンゲージメントの強化を早急に行う必要がある。



1.「自律・分散・協働型」の働き方と組織運営

テレワークが主流になってくると、物理的な場を共有しないバーチャルな働き方、いわば「自律・分散・協働型」の働き方が増えていくと考えられる。

こうした新しいカタチの働き方を実現するためには、上司・部下間の信頼感の醸成や、リモートマネジメントの活用、非接触型に対応したコミュニケーション手段の導入などが重要になってくる。



2.エンゲージメント強化

テレワーク導入によって、求職者はどこに住んでいても転職活動ができることになり、特に高付加価値人材は日本中の企業から求められる存在となる。実際にチャットワーク株式会社が、地方に住むエンジニアを社員として採用しているという例もある。

在宅勤務が広がるこれからの時代、人事は、自社に対するエンゲージメント施策を見直す必要がある。このほか、チーム内でのコミュニケーション活性化のためには、感染症対策を十分に施した上で出勤日を設け、普段オンラインで情報共有しているメンバー同士が久しぶりに顔を合わせることで、出勤日がオフ会のような感覚で楽しめる場とするなど、オンラインとオフラインをうまく使い分けてコミュニケーションを促進していくことも、エンゲージメント強化の重要なポイントとなる。


04
まとめ

この記事のおさらい
  • テレワークの普及は、一過性のものではなく、多くの企業で今後も定着すると予測されている。
  • テレワークにより働く場所に依存しないことは高付加価値人材の離職につながりやすいため、評価制度の見直しやエンゲージメント強化が必要となる。
  • テレワークでは仕事のプロセスが見えず人事評価の難しさが指摘されているため、業務の見える化が行えるジョブ型雇用の導入が広がるだろう。