コラム

「副業」の現状と企業・労働者の意識
働き方改革の一環として、注目が高まりつつある副業・兼業・パラレルワーク。
本コラムでは、「副業」、「兼業」、「パラレルワーク」のそれぞれの違いをご紹介のうえ、企業・労働者において副業がどの程度浸透しているのか、副業のメリット・デメリット、副業時に注意すべき事項などについて、先進事例の紹介とともに考察したい。
また、弊社では、今般のコロナ禍の影響を踏まえての副業に関する意識調査を実施しているので、その調査結果についても、あわせて簡単にご紹介したい。
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企業・労働者双方における副業・兼業のメリット
厚生労働省が「働き方改革」の一環として、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、
「モデル就業規則」を公開した2018年は、副業解禁元年と言われている。
政府が副業を推進する理由を、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」から抜粋すると、
- 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
- 労働者の自律性・自主性を促すことができる。
- 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
- 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
- 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、主体的なキャリア形成が可能となる。
- 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求できる。
- 所得が増加する。
- 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の企業・転職に向けた準備・試行ができる。
といったことが挙げられている。
企業、労働者双方にメリットが想定され、「働き方改革」ひいては経済成長に寄与するとうたわれていた「副業の促進」の現状が、どう進展しているのか、この2年間を振り返って検証してみる。
02
「副業・兼業」と「パラレルワーク」の違いとは?
・「副業」:「副」は、「そえる、付け加える」という意味。「副業」とは、主たる職業である「本業」の傍らで別の収入を得る仕事のこと。基本的に本業よりも収入が低い。ただし、本業と副業で収入規模が逆転するケースもある。
・「兼業」:「兼」は、「2つ以上のものを備える」「あわせもつ」という意味。「兼業」とは、収入の有無にかかわらず本業と兼ねて行う別の仕事のこと。収入面では本業と同等あるいは以下である。
・「パラレルワーク」:自身のキャリア形成を目的として複数の仕事で収入を得る働き方のこと。複数の仕事の間に「本業」と「副業」という区分けは存在しない。その活動には、経済活動もボランティア活動も含まれる。
03
副業はどこまで浸透しているのか?
1.従業員の副業に対する関心は高い
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リクルートキャリアの調査「兼業・副業に対する個人の意識調査2019」(副業・兼業を容認している会社に勤める正社員2,062人の回答)※1によると、「副業・兼業を現在している」が31.9%、「過去にしていた」が6.9%と、約4割が経験者という結果だった。未経験者への「副業をしてみたいと思うか」の問いには、「興味があって応募したことがある」2.4%、「興味があって調べたことがある」17.6%を含めて、「興味がある」の項目に回答したのは合わせて72.9%にのぼった
従業員の副業に対する関心の高さがこの結果から見て取れる。また、同調査の「どんなきっかけがあれば一歩踏み出せるか」の質問(副業未経験者・複数回答)では、「身近に副業をしている人がいれば」が28.4%、「会社から制度の説明・アドバイスがあれば」が27.5%、という結果で、3人に一人が、会社が容認して勧めてくれる環境で、身近に行っている人がいればトライしてみたいと考えている。容認という土台の上で、実行している社員が増えれば、一層増えていくスパイラルができると考えられる。
※1)リクルートキャリア「兼業・副業に対する個人の意識調査2019」
https://www.recruitcareer.co.jp/news/20190711.pdf 2.企業側の副業に対する対応は
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一方、企業側はどう考えているのか、リクルートキャリアの調査「兼業・副業に対する企業の意識調査2019」※2から抽出してみる。「社員の副業について認めていますか」の問いに、「認めている(推進+容認)」が30.9%。2018年同調査の同質問では28.8%と2.1P上昇しているがまだ多いとはいえない。「社員の副業を今後推奨していく可能性は」という問いに、「推奨の可能性あり」が42.2%と、半数にも満たない結果となっている。前年比で副業に対する肯定感は伸びているものの、副業という労働スタイルが浸透しているとは言い難い。
副業を推進または容認している企業の、「導入理由や背景」で、2018年調査との比較でポイント上昇が高かったものは、「人材育成・本人のスキル向上」が30.4%で+6.2ポイント。次いで「離職防止につながる」27.6%で+5.2ポイント。2018年は「特に禁止する理由がないから」という受け身の理由が多かったが、2019年は目的を持った導入理由が伸びている。
※2)リクルートキャリア「兼業・副業に対する企業の意識調査2019」
https://www.recruitcareer.co.jp/news/20200324fk7so.pdf 3.なぜ多くの企業は副業解禁に至らないのか
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社員の副業を認めていない企業に対する、パーソル総合研究所が行った調査※3では、副業禁止を続ける理由は、ポイントの多い順に「従業員の過重労働につながる」が49.2%、「自社の業務に専念してもらいたい」47.0%、「疲労による業務効率の低下が懸念される」43.6%、「情報漏洩のリスク」24.2%、「労務管理等の事務管理が煩雑になる」19.6%、「人材の流出につながる」14.0%となっている。
社員の副業を認めている企業の、「認めたことにより、それぞれに効果があったと思いますか?」※2の問いに対して、「人材採用への効果があった」は29.8%、「離職防止・エンゲージメント向上があった」は35.6%、「人材育成への効果があった」は38.9%で、いずれも「効果がなかった」を下回る結果になっている。しかし、「いまのところ効果はないが、期待している」がいずれも一番高いポイントを占めており、導入して日が浅いところから、まだ期待含みの様子見状態であると考えられる。
※3)パーソル総合研究所「副業実態・意識調査【企業編】」:従業員数10人以上の企業に所属する人事担当者1641人と、
スクリーニングした副業初夏企業300社と禁止企業700社からの回答を集計・分析
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/sidejob.pdf 4.副業の推進・容認のメリット
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前述のリクルートキャリアの調査で「副業を容認する理由」(複数回答)で、「とくに禁止する理由がない」40.7%を除いた項目で多い順に並べると、「社員の収入増につながる」40.8%、「人材育成・本人のスキル向上」30.4%、「社員の離職防止(定着率の向上、継続雇用)」27.6%、「社外の人脈形成」19.8%、「イノベーションの双発・新事業の促進」18.1%、「人材調達」17.5%と続く。
これらの理由は、容認した場合に享受する企業・労働者双方のメリットにそのまま通じる。
逆に、裏を返せば副業を禁止した場合のデメリットに成り得ることも覚えておきたい。
04
副業解禁を実践している企業事例
1.先進事例:R社
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R社の企業理念のひとつに「まず人が居て、輝いてこそ企業がいきる。主役は人、一人ひとりが自らの意志と力で自立し、組織を動かしていきます」というものがある。この考え方に基づき、2014年8月「ARK2014人事改革PJ」が発足。2016年「社内ダブルジョブ」「社外チャレンジワーク」というふたつの兼業制度が生まれ、従来の枠組みを超えた働き方への挑戦がスタートした。
2.先進事例:D社
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「社員がパッション(強い情熱)とやる気をもって仕事に取り組むことが大切」という考えを前提に、「やりたいこと」が社外にあった場合でも、それを応援しようとの考え方をベースにしている。自分のやりたいことをやれているという状況自体が、本業でも「やりがい」として跳ね返ってきて、熱意をもって仕事に取り組むことができ、その結果として成果が出る。
05
副業・兼業、パラレルワークを行う人が注意することは?
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業の留意点も明示している。
- 競業避止義務を守ること
会社の信頼を裏切る行為であり。企業秘密などが競業他者に漏れるなど、本業の利益を害することなく就業できるものを選ぶ。 - 労働契約上の信義則を守ること
本業の勤務先の副業・兼業に関するルールを確認のうえ、必要に応じて届け出る。 - 自己管理を徹底すること
業務量、業務の進捗状況、就業時間、健康状態の管理を自ら行い、怠らない。 - 社会保険の適用条件や必要な申告手続を把握すること
所定労働時間や副収入額に応じた社会保険の適用有無、確定申告の要否を確認する。
副業・兼業を行う社員、それを容認する会社、双方にメリットもあればデメリットもある。
副業・兼業、パラレルワークを行う人は、その留意点を踏まえて行動することが大切だ。
06
新型コロナウイルスの影響で副業する人は増えるのか?
ここまでは、新型コロナウイルスによる、いわゆる「コロナ禍」が騒がれる前の他社調査データに基づいて、企業・労働者において副業がどの程度浸透しているのかであったり、先進的な事例等をみてきたが、今般の「コロナ禍」によって、今後副業は更に増えていくのだろうか?
弊社では、全国の20代~40代の会社員(1,115人)を対象に「新型コロナウイルスの影響による将来の働き方についての意識調査」を行ったところ、新型コロナウイルスの影響で将来に不安を感じている人が83.3%に上り、その対処として収入アップのために副業を始めてみたいと考える人が60.1%にも上るという、興味深い結果がでている。
調査結果からも分かる通り、今後、ますます副業にチャレンジする人が増えてくるものと考えられる。
宣伝じみた形となるが、副業に興味のある方は、弊社が運営している「スキルシェアサイト(https://www.skill-crowd.com/)」の利用を検討してみてはどうだろうか。
スキルクラウドは、個人のスキルやノウハウをオンライン・オフライン問わず気軽に販売・購入ができるスキルシェアサイトで、
「自分の趣味やスキルを活かした副業がしたい」
「副業したいけど、今の自分のスキルで副業が出来るか心配」
「外に出たり、時間に縛られたりする副業はしたくない」
といった方に是非おすすめしたい。
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まとめ
- 「副業実態・意識調査」※3では、「全面的に許可している」は13.1%、「禁止していない(条件付きで許可)」は36.1%、「全面的に禁止」が50.0%と、半数は禁止の状態。
- 副業・兼業、パラレルワークを行う人は、「競業避止義務を守ること」「労働契約上の信義則を守ること」「自己管理を徹底すること」「社会保険の適用条件や必要な申告手続を把握すること」といった留意点を踏まえて行動することが大切。