コラム

2020.04.23
人事コンサル 人事トレンド
更新日:2020.04.23
著者:H.C.
人事コンサル 人事トレンド
人事給与システムの選定ポイント
column5

この記事を読むと分かること
  • 人事給与システムに求められる要件とは?
  • 人事給与システムにはどんな区分があるのか?
  • 企業規模別、代表的な人事給与システムとは?
  • 導入時の選定の基準とは?


人事給与システムの選定ポイント

零細企業を除いてほぼすべての企業が導入している人事給与システム。
製品の高性能化、人事トレンドの変遷、経営戦略との連動など、いまや人事給与システムに求められる要件は多岐にわたっている。

また、一度導入すると簡単には変更のできない性格のシステムであるだけに、その導入にあたっては、さまざまな角度から選別をする必要があり、より高い導入効果をあげるための選定基準についてみていく。


01
人事給与システムに求められる要件

人事部にとって日々の業務に直結する人事給与システムを選定するにあたっては、システムに何を求めるのかを明確にすることがとても重要である。
自社の人事制度を運用していく上でシステムには何を求めるのかという要件を明確にしていくことが必要だ。
まず、人事給与システムに求められる要件のひとつに「人事給与関連の業務効率化」があげられる。月末あるいは年度末などに集中した業務が発生することが多く、業務の効率化が求められる。
また、人手不足などの世相を背景に、人事制度の変更を実施する際に「制度の変化への対応」するためにシステムを導入・変更することがある。
さらには、労働法や税制の改正にあわせ容易に変更できることも要件のひとつとなる。

こうした「現在の課題」を解決するために導入される人事給与システムであるが、経営戦略の一環としての人事戦略の遂行に助力となるか否かの判断も要件のひとつとなる。
その一例として、他の人事システムとの連携が挙げられる。なぜならシステム連携は、個々の従業員情報の一元管理を可能にするからである。人事給与システムと連携させる情報は、勤怠情報、職務経歴情報、保有資格情報などがある。そこで生成された従業員データは、人材配置や人材育成に活用できる。
人事給与システムは、現在の課題解決だけでなく、近い将来の戦略的人事を見据えた要件整理も重要となる。

導入にあたっては、課題解決の最大限の導入効果を得るために、現在の人事給与業務の課題を認識しなければならない。そのためには、導入検討段階で現状の業務フローを整理し、課題を明確にし、業務の見直しによる非効率業務の改善を目指すべきであろう。
またシステム導入前後の効果を予測・測定するために、どの程度の改善が見込めるかという「Fit & Gap分析」を行うべきである。「業務の効率化」が目的であれば、非効率な業務を現状の業務フローから洗い出し、より大きい改善効果を見込める業務からシステム化を目指すべきであろう。


02
人事給与システムの区分

人事給与システムは、人事制度の運用にフィットしたものを選ぶべきである。
おおまかに大企業向け、中小企業向けに分けることができ、自社の現状に即したものを選ぶ必要があるが、そのほかにもシステムの構築形態や導入方式などによって区分される。昨今ではクラウド型のサービスを導入する企業も増え提供形態も考慮する必要がある。

<人事給与システムの区分>

〇企業規模:大企業向け、中小企業向け

人事システムは企業規模によって求められる要件が大きく異なる。



〇システム構築形態:独自開発型、パッケージ・市販ソフト型

独自開発は自社の実態に即したシステム構築が可能であるが導入にあたってのコスト、期間、マンパワーがかかる。
特に中小企業にとっては導入即日から利用可能のパッケージ・市販ソフトを利用することが一般的。



〇システム提供形態:オンプレミス型、クラウド型

パッケージを構築後のサーバやソフトウェアの保守・運用を自社で行うオンプレミス型の場合、セキュリティ、カスタマイズ、既存システムとの連携にメリットがあるものの、インフラを自社で調達するため、コスト面、調達期間、資産計上による税務処理などのデメリットがある。
クラウド型はサービス提供者保有のシステムを利用する形式のため、コスト負担減だけでなく、障害時のリスク分散を図ることができる。



〇導入方式:ユーザー主導型、ベンダー主導型

ユーザー主導での導入を目指すことでのメリットは、利用者の立場に立った設計、不要な機能を省き過不足のないシステム構築が可能であることだ。一方でベンダー主導型の場合は、多くの企業を手掛けてきたナレッジや客観的な視野による提案、専門的分野におけるエンジニアが豊富なことがメリットしてあげられる。
しかしながら、長期間ベンダーに頼ることで、社内にノウハウが蓄積されない、馴れ合いによってダイナミックな変革ができない、予算が膠着化するなどのデメリットも考えられる。
また、ユーザー主導を推進するためには、企業自身がITスキルを身につけていることが必要で、専門知識を有する専任者の存在が必要となる。



<主な人事給与システムの例>

〇大企業向け

扱う規模、グローバル化、グループ企業間連携、他の基幹システムとの連携などの観点から、大企業向けに特化したシステムの代表的なものとして下記があげられる。

・POSITIVE
人事・給与・就業管理だけでなく、人材育成支援やグループ会社管理など広範な業務機能を網羅し、グループ人事への展開、グローバル展開をする企業にメリットがある。

・SuccessFactors(SAP)
パッケージで世界シェア1位を誇るSAPの人事給与システムで、基幹システムとの親和性が高い。

・COMPANY
国内のERPパッケージであるため、日本企業の事情に適した運用が可能。法改正へのアップグレードを無償で行っていることの評価も高い。



〇中小企業向け

古くから中小企業向けに市販パッケージソフトとして知名度のあるのは以下の通りである。機能的にはどれもほとんど差異はないとも言われているが、会計事務所の推奨や他のシステムとの連携で選ばれるケースが多い。昨今ではクラウド化への取り組みも選定ポイントのひとつとなっている。

・OBIC7、奉行シリーズ
2社で圧倒的なシェアを誇るごく一般的なパッケージソフトウェア。

・PCAシリーズ
会計事務所からの信頼が高いソフトウェア。

・人事労務 freee(フリー)、フリーウェイ給与計算、Pay-Look(ペイルック)
クラウド化の波を背景に認知度を増している新興ソフトウェア。
月額数千円~という圧倒的な価格によって人気を伸ばしている。




03
人事給与システムの選定基準、選定のポイント

目的を定め絞り込まれた候補の中から、実際に導入するにあたっては、以下のような具体的な基準を定め、選定をしていくことが重要である。

・コスト
導入にあたってのイニシャルコスト、ランニングコストについて検討。
オンプレミス型であればハードウェアやメンテナンスの費用も考慮する必要がある。

・導入期間
導入あるいは運用開始までの期間について検討。
場合によっては段階的な機能実装の可否も考慮する必要がある。

・拡張性
人事給与以外のシステムとの連携、親和性はとても重要で、自社のシステム全体を見据えた視野が必要である。
自社の運用に適したカスタマイズの可否も重要。多言語対応の有無も考慮。

・操作性
UIをはじめとした操作性、マルチデバイス対応の有無などを考慮。

・人員
社内にシステム部門、または担当者を置く場合と、すべて外部に委託する場合が考えられる。

・サポート体制
導入後サポートの有無、またそのサポート内容。


04
まとめ

この記事のおさらい
  • 人事給与システム導入にあたってはその目的を明確にし、要件に沿った業務フローの見直しから取り組むことが効果的。
  • 導入効果を予測し、導入後の効果測定のために「Fit & Gap分析」をすることが望ましい。
  • 人事給与システムは、大企業向け、中小企業向けとおおまかに分類され、システム構築形態、システム提供形態、導入方式などと区分される。
  • 大企業向けにはPOSITIVE、SuccessFactors(SAP)、COMPANY、中小企業向けにはOBIC7、奉行シリーズ、PCAシリーズといった代表的なシステムがある。
  • 導入時の選定にあたっては「コスト」「導入期間」「拡張性」「操作性」「人員」「サポート体制」などの基準を持って検討すべき。