コラム

2020.01.16
人事コンサル 人事トレンド
更新日:2020.01.16
著者:H.C.
人事コンサル 人事トレンド
2020年の人事関連法改正予定と業務/システムへの影響
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この記事を読むと分かること
  • 2020年には「労働基準法」「労働者派遣法およびパートタイム・有期雇用労働法」「社会保険・労働保険関連の法令」「税制」の改正が予定されている。
  • 【労働基準法】「時間外労働の上限規制」に基づく勤務状況を適正に把握するためにタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などを客観的に記録する必要がある。
  • 【労働者派遣法およびパートタイム・有期雇用労働法】正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の「同一労働同一賃金」要件が規定され、就業規則や人事制度等の見直しが求められる。
  • 【社会保険・労働保険関連】労務関係手続の一部の電子申請が義務化され、社内システムの対応が迫られる。
  • 【税制改正】「基礎控除の引き上げと適用要件の新設」「給与所得控除の引き下げ」によって「年末調整」作業が複雑化するため、人事労務アプリケーションの導入検討が必要である。


2020年の人事関連法改正と業務/システムへの影響

少子高齢化による「人材不足」、政府主導の「働き方改革」の推進等を背景に、労働関連の法改正が予定されている。

人材の有効活用、流動化の促進、官民双方の業務フローの改善といったことを目的とした法改正によって、社内制度はもちろん、業務内容やシステムの見直しを、企業は迫られている。特に行政の業務負担軽減のための電子申告化は、社内システムと直接連動するためその対応が急務であるといえよう。

2020年に予定されている、数ある法改正の中でも、人事業務/システムに直接影響があると思われる法改正をピックアップし、そのポイントと業務課題を整理する。


01
労働基準法の改正内容とその影響

まずは、労働基準法について、法改正内容および法改正により生じる業務課題について整理する。

<法改正概要>

改正労働基準法では、月45時間かつ年間360時間の時間外労働の上限を法定化し、違反に対して罰則が科される。

また、労使協定に「特別条項」がある場合でも、時間外労働時間上限を年720時間、一時的に業務量が増加する場合でも、休日労働時間を含み6ヶ月平均で80時間以内、単月で100時間未満、月45時間の時間外労働を上回る回数は年6回までという上限が設定される。

法改正のポイント
  • 時間外労働時間の「限度基準」が「法律」に格上げされ違反には罰則を設ける。
  • 2019年に大企業を対象として施行された「時間外労働の上限規制」が、中小企業に対しても適用される。
  • 労使協定(36協定)に「特別条項」がある場合でも上限を設ける。
<業務課題と解決に向けた対応策 = 労働時間の管理>

労働時間を客観的に把握するために、全従業員の労働時間の記録を3年間保存することも求められている。
タイムカードやICカードなどを用い、適正かつ公正に労働時間管理を行うために、その管理・保存方法を早急に検討する必要がある。

また労働基準監督署の調査では、「パソコンの使用時間」についても記録の提出を求められることがあるため、パソコンを使う業務がメインの場合は、パソコンの使用時間と連動した勤怠管理システムの導入を検討することも有効である。

単なる時間規制にとどまらず、業務フローの見直しを含めた効率化、人材育成や適材適所による生産性の向上を図る機会とすることが望ましい。


02
有期雇用関連法の改正内容とその影響

次に、労働者派遣法およびパートタイム・有期雇用労働法について、法改正内容(同一労働同一賃金)および法改正により生じる業務課題について整理する。

<法改正概要>

パートタイム労働力の有効活用、雇用の流動化や多様化を促進することを目的とし、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差が禁止される。「均衡」ないしは「均等」な待遇、いわゆる「同一労働同一賃金」が適用され、その規定を統一的に整備する。

法改正のポイント
  • 不合理な待遇差を禁止し、待遇に関する説明義務を強化する。
  • 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備される。
  • 労働者派遣法は大企業・中小企業を問わず適用される。
  • パートタイム・有期雇用労働法は大企業のみが適用対象となる。(中小企業の適用は2021年4月1日)
<業務課題と解決に向けた対応策 = 同一労働同一賃金の実現、勤務体系に対応した勤怠管理>

厚生労働省が作成した「同一労働同一賃金ガイドライン」に基づき、「非正規雇用労働者の基本給や賞与、手当等の処遇を定めた就業規則や賃金規定の作成」「会社全体の賃金・人事制度の構築・見直し」「業務内容・人員配置の見直し」などの対応が必要となる。

また、正規雇用者と非正規雇用者の勤務体系に対応した勤怠管理システムや、派遣先と派遣元が派遣労働者の勤怠を共有できる勤怠管理システムの導入が必要となる。

契約締結にあたっては待遇情報等の明示・説明義務が強化され、非正規雇用者が各種規定や労使協定の内容を閲覧できるしくみが求められる。


03
社会保険・労働保険関連の改正内容とその影響

次に、社会保険・労働保険関連について、法改正内容および法改正により生じる業務課題について整理する。

<法改正概要>

行政・民間双方の業務負担が高い書面による手続きの電子申告化が進められており、2020年4月以降に開始される事業年度から社会保険の一部手続きを電子申請で行わなければならない。

法改正のポイント
  • 社会保険・労働保険関連の一部手続きの電子申請を義務化する。
  • 社会保険では「厚生年金保険」「健康保険」「労災保険」「雇用保険」が対象となる。
  • 労務管理では「時間外労働・休日労働に関する協定届」「1年間の変形労働時間制に関する協定届」「就業規則の届出」が対象となる。
  • これら法改正は、資本金または出資金の額が1億円を超える企業が対象となる。
<業務課題と解決に向けた対応策 = 電子申請業務の円滑な推進、連携したシステムの導入>

電子申請は、行政ポータルサイトの「e-Gov」において行われるが、その使い勝手から業務負担が増えるというデメリットも指摘されている。

そこで、「e-Gov」と外部APIを連携させたアプリケーションの導入によって、申請書類の作成から審査状況の確認、申請までをワンストップに処理することも可能である。

こうしたアプリケーションの導入にあたっては、「IT導入補助金」を活用できるため、その活用も検討すべきである。


04
税制改正内容とその影響

最後に、税制改正内容および税制改正により生じる業務課題について整理する。

<税制改正概要>

年末調整の基礎控除や配偶者特別控除に関する内容が変更になり、新たに所得金額調整控除が創設される。

それに伴い、年末調整書類の形式が変更される。変更後の書類は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」と、3種類の申告書を1つにまとめた形式となる。

また、行政のコスト削減及び企業の生産性向上のために「e-Tax」「eLTAX」の利用が促進される。

税制改正のポイント
  • 基礎控除が10万円引き上げられるが、所得金額に応じた適用要件が新設される。
  • 給与所得控除が10万円引き下げられ、控除要件も引き下げされる。
  • 大企業を対象として法人税、消費税などについても電子申告を義務化する。
<業務課題と解決に向けた対応策 = 複雑化する業務の簡略化、連携したシステムの導入>

年末調整書類の形式変更(申告書の統合)への対応、複雑化する年末調整作業の負荷軽減のため、業務を効率化する人事労務アプリケーションの導入は不可欠である。

業務の電子化を円滑に進めるためには、「e-Tax」「eLTAX」などと連携が可能で、今後発生する税制改正にも柔軟に対応できるシステムを選択することが重要である。

こちらも「IT導入補助金」の対象となっており、併せて導入を検討することが有効であろう。


05
まとめ

この記事のおさらい
  • 「労働基準法」の改正によって、厳格な勤怠管理が求められ、タイムカードやパソコン管理と連動したシステムが必要。またこの機に業務の効率化、生産性向上を図ることも重要である。
  • 「同一労働同一賃金」に対応するため、正規雇用者と非正規雇用者の勤務体系に対応した勤怠管理システム導入や、各種規定を周知するためのしくみが必要である。
  • 労務関係手続の電子申請義務化に伴い、「e-Gov」と連携させたアプリケーションの導入が求められる。
  • 「年末調整書類」の変更、年末調整業務の負荷軽減のために「e-Tax」「eLTAX」と連携したシステムを導入することが望ましい。
  • 各種システム導入にあたっては、「IT導入補助金」を有効活用することで、導入、運用コストを軽減することができる。